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マリーニョからのレシピ『アーティストを育てよう』

18・01・11
 アンビシャス読者の皆さん、明けましておめでとうございます! そして今年は全世界が注目するワールドカップイヤーですね。日本代表の躍進はもちろん、セレソン(ブラジル代表)が前回の屈辱を晴らし優勝出来るのかにも注目しています。

 昨年には出場国が決まり、抽選会があって、今からどのように戦うのか、自国は勝ち上がれるのか、どこが優勝するのかなどなど、もしかしたら祭典の前の今が一番楽しいのかもしれませんよね。皆さんの予想はどうでしょうか?

 さて、ワールドカップの興味は尽きませんが、今回は私がサッカーを中心にプロスポーツを考える時のことをお話ししたいと思います。

 最初に単純に説明をすると、お金を出して見たいものがあるかどうかが、ひとつの基準になっています。それには、競技性(レベル)、ひいきチーム、エンターテイメント性や芸術性が大切で、特に私は、エンターテイメント性がプロスポーツには欠かせないものだと思っています。その中でもサッカーは、芸術性が世界中の人々を惹きつける重要なものだと確信していて、メッシ、ロナウド、ネイマールは、もはやアーティスト(芸術家)と言っても、皆さん納得するのではないでしょうか。

 そことは比べられませんが、Jリーグの日本人選手で見たいのは、ジュビロの中村俊輔、フロンターレの中村憲剛、ガンバの遠藤、コンサドーレサポーターなら小野かな。全部一時代を築いたベテランですね。中堅ならセレッソの柿谷、清武ぐらいでしょうか。皆さんは「うまいから目の前で見たい!」と言うような選手は沢山いるでしょうか? 

 女子の場合は、実際にプレーをしたり、サッカーに関わる人が増えるのは本当に素晴らしいですが、プロリーグとして競技性やエンターテイメントとして捉えると、まだまだこれからの部分があるでしょうね。引退してしまったけど澤や、現役の川澄、宮間クラスの選手がどんどん出てきて欲しいですし、そのような世界に通用するレベルの選手を育て続けるというのも大きな課題だと思います。

 フットサルも同じことが言えると思います。特に今の日本のFリーグはフィジカルと戦術の競い合いが目立ってしまって、エンターテイメント性が少なくなっているのではと感じています。もちろん勝利を目指してのことでしょうが、やっぱりリカルジーニョのようなうまい選手がチームに1人ずつでもいたら楽しいし、見に行きたくなるでしょう。

 エンターテイメント性のある、見ていて楽しいプレーや芸術性が加われば、新しいファンや新規のスポンサーも増えてもっとリーグが盛り上がるかもしれない。そうすればクラブの収入も上がって良い選手を雇えて、その選手の素晴らしいプレーをまた見たいという、ファンが増える好循環につながるでしょう。これはJリーグも同じですね。

 でもこのような問題は、日本だけの話ではありません。昨年の親善試合で日本を3−1で破ったブラジルも、残念ながら国内ではクラッキと言われるような真のスターが見られなくなっている。これは若手の有望選手がヨーロッパのビッグクラブに買われてすぐにいなくなってしまうからなんですが、選手の立場からしたらしょうがないと思います。やはりチャンピオンズリーグなど世界最高峰の戦いと、巨額の年俸には勝てませんよね。

 後は、そもそも選手の育つ環境が変わってきているという問題もあります。都会では昔のようなどこでもサッカーが出来るところは少なく、環境面でも自由度の高い田舎の方から、良い選手が出てくる傾向が多い。

 でも結局、国内どこでもサッカーが一番の人気スポーツで、男の子のほとんどはサッカーをやったことがあり、そこからうまい子たちが熾烈な切磋琢磨を経験し、生き残りや生活をかける訳だから、日本の選手とは差が出るでしょう。さらに言えば、黒人、白人、ミックス問わず、人種のるつぼの中、ほんの一握りの優れた選手のみがトップに上がる土壌があるので、この差も大きいですね。

 確かに日本の選手もうまくなっているのは間違いないけれど、タフさやメンタル面を含めるとこの差は大きなものになります。さらに日本の進化の時間、ブラジルもまた進化しているとも言えるでしょうし、この差を埋めていくのは並大抵のことではないと思います。だからこそ、時間はかかっても日本の良さを生かしたサッカー文化を醸成しながら、世界のトップを目指した選手の育成をし続けなければならないですし、私も日本から世界的な選手がどんどん出てきて欲しいと本当に願っています。

 その中、ブラジル国内クラブの問題としては、経営の健全化は当然のこと、国内の経済状況も多分に影響しています。ブラジルワールドカップやリオ・オリンピックの前までは、経済が上向いているように見せていたけど、本当は違っていた。貧富の差がさらに広がってしまったんだよね。これは難しい問題だけど、ブラジル自体は資源も豊富にあるし、本当は政治家がしっかりしてくれれば、経済が良くなる可能性はあるはずなんだけど・・・。

 まぁ難しい話になってしまったけど、最後はやっぱりサッカーが救いなんだよね。これが一番のブラジルらしさかなぁ(笑)
アデマール・P・マリーニョ