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ヨーロッパサッカー回廊『英国4か国そろい踏みならず』

17・10・17
 10月のインターナショナルマッチデーでのロシアワールドカップ予選が世界中で行われ、悲喜こもごもの結果が生まれた。

 ヨーロッパ予選で注目されたのは、果たして英国4か国がそろい踏みで出場国になれるか? 名門オランダは復活し出場権を獲得できるか? そして小国人口33万人のアイスランドが先のユーロ2016でベスト4になった奇跡を再現できるか? ユーロ2016チャンピオンに輝いたポルトガルが出場権を獲得できるのか? などなどであった。

 まずF組の英国イングランドは、最終2戦を残しながらも監督サウスゲートでさえ認めた「イングランドにスペインのパフォーマンスを期待しても無理」という言葉通り、スロベニア戦では観客から紙飛行機を飛ばされる程スローペース。安全パイを振る試合ぶりをホームのウエンブレーで展開しながらも、後半アディショナルタイム4分、ストライカーのハリー・ケーン(スパーズ)が決勝点を挙げ1−0で辛勝。最終のリトアニア戦も決して世界のトップを狙える出来ではなかったが、アウエーで1−0と勝利。F組負けなしで予選を終えロシア行きを決めた。

 同じF組のスコットランドは、最終2戦に勝てばイングランドに次いでグループ2位となり、プレーオフに進める確率は高かった最終戦、対スロベニアでは惜しくも2−2の引き分けに終わった。勝ち点ではスロバキアと並んだが、得失点差でスロバキアに2位の座を持っていかれロシアへは行けなくなった。スコットランド監督ストラッカンは試合後辞任した。

 これで英国の一角が崩れ、そろい踏みは無くなったのである。2位となったスロバキアは2位の国の中で一番低い勝ち点18となり、プレーオフには進めなかった。ちなみにUEFAでは9組の予選で各組トップが自動出場国となるが、2位となった9国のうち勝ち点が多い8か国がプレーオフに進み、勝ち点最下位の国は進めない規定となっており、スロバキアは残念な結果となった。

 ユーロ2016でベスト4の栄誉を勝ち得たD組ウェールズは、予選当初は引き分けが多く、無敗で最終2戦に懸けトップのセルビアを追いかけていた。しかし、ウェールズの主砲レアル・マドリッドのガレス・ベールが負傷のため最終2戦出場できず。ジョージアには1−0で勝ったが、最終戦、勝った方がプレーオフの権利を得るアイルランドとの決戦はホームで戦い、結局決め手なく0−1で敗退し、ロシアへの夢はついえた。やはり天才ベールを欠いたウェールズは並みのチームになってしまい、熱狂的なアイルランドのサポーターの前に屈したのである。

 北アイルランドはドイツと同じC組で2位の座を確保しており、チームに緩みがでていたのか、ドイツには1−3で敗退、最終のノルウェー戦にもアウエーで0−1と敗れたが、プレーオフの座は確保した。結局史上初の英国4か国のそろい踏みはならなかった。

 強豪オランダはA組フランス、スウェーデンと同組。この2戦を前に2位スウェーデンに勝ち点3差で離されており、最終戦となったスウェーデンとの直接対決で7点差をつけ勝利せねばロシアの切符を獲得できない状況に追い込まれていた。試合はロッベンのミドルシュートを含め2点を入れスウェーデンに勝利したが、得失点差で及ばず、強豪オランダのロシア行きは無くなった。

 小国人口33万人のI組アイスランドは、ユーロ2016でイングランドを破りべスト8に進んだ勢いは緩まず、アウエーでのトルコ戦を3−0で勝利。最終戦のコソボも2−0で下し、ユーロの快進撃を裏付けるロシア行きを決めた。

 なぜ人口の少ない極寒の小国が強くなったのか? 近年、観光産業からIT産業に国の基幹産業を変革し、スポーツ新興への投資が増え、インドアスポーツセンターの建設などのスポーツ環境が変わったことも一つの要因と言われている。アイスランドがロシアでもユーロ並みの活躍をするか注目に値する。一方、I組トップを走っていたクロアチアは、フィンランドと引き分けたことが響き、2位プレーオフに臨みロシア行きを賭けることになった。

 ユーロ2016優勝のポルトガルは、クリスティアーノ・ロナウドのワンマンチームとみなされていたが、安定した戦いで躍進するスイスに次いで2位の座に定着。プレーオフに回るかと思われたが、最終戦ホームでスイスとの直接対決に2−0と快勝、勝ち点27でスイスと並び、得失点差でロシアへの切符を確保。ロナウド無きワールドカップにはならなかった。この結果スイスはプレーオフに回ることになった。

 ヨーロッパからはフランス、ポルトガル、ドイツ、セルビア、ポーランド、イングランド、スペイン、ベルギー、アイスランドの9か国がロシア行きを決定した。スペインと同じG組イタリアはプレーオフに勝たなければならなくなった。

 プレーオフにはスウェーデン、スイス、北アイルランド、アイルランド、デンマーク、イタリア、ギリシャ、クロアチアの8か国が抽選の上、ホームアンドアウエーで11月に4試合が行われる。勝った4チームがロシア行きとなる。

 我がイングランドは、ロシア大会では厳しい組み合せが待っていることが判明した。現在イングランドは、FIFAランキング12位であり、本大会予選の組み合わせではトップシード国の第1ポットとはならず、第2ポットに入ることになっている。

 そのため抽選によっては、次のどちらかの可能性があると英国ブックメーカーが予測している。
【1】ドリームシナリオとして、イングランド、ロシア、イラン、ニュージーランドの組み合わせ
【2】悪夢のシナリオとして、イングランド、ブラジル、アイスランド、ナイジェリアの組み合わせ

 当然、【1】のドリームシナリオのような組み合わせを願っているであろう。

 ロシア大会の観戦チケットもインターネットでの販売が始まり、あと9か月に迫ってきた。またフットボールフィーバーがやってくる!


◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
  89−04:日本サッカー協会欧州代表
  94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
  08    :JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫