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ヨーロッパサッカー回廊『ユーロ2016の行方』

16・01・13
 世界情勢混迷のなか2016年も明けたが、英国のフットボールだけは年末年始いつもと変わらず民衆の心をつかみ激しい闘いを続けている。

 その中で今年行われるUEFAユーロ2016の組み合わせ日程が発表になった。1グループ4か国で6グループに分かれた予選があり、グループトップ2か国とグループ3位のうち上位4か国がノックアウト戦のベスト16へ進出できる。

 英国からはイングランド、ウェールズ、北アイルランドそして隣アイルランドを準英国とすれば4か国が出場する。さて、どうなるかこの4か国?

 グループB組にイングランドとウェールズの2チームが入り、ホームインターナショナルとして激突する。この組には他にロシアとスロバキアがいる。イングランドは予選無敗で抜けてきており、このグループでのトップ2は堅い。2位を狙うのがロシアとウェールズのどちらかであろう。

 1958年以来58年振りに国際大会に出場するウェールズは、レアル・マドリッドのガレス・ベイルとアーセナルのラムジーを擁し久しぶりに攻守にバランスのとれたチームとなっている。初戦のスロバキアに勝てれば2戦目で激突するイングランドに敗れても3戦目のロシアに勝ち点を取り、ベスト16進出を果たせるのではないかと予想される。

 ウェールズはこの大会の目玉となる可能性あるチームである。2戦目のイングランド対ウェールズ戦の会場フランス北部ランススタジアムへは、ユーロスターで多くのイングランドとウェールズサポーターが殺到することであろう。注目の1戦である。

 グループC組では北アイルランドが、ドイツ、ポーランド、ウクライナといったパワーフットボール国と戦う。チームワークで勝ってきた北アイルランドにとってグループを抜け出す鍵は初戦のポーランド戦であろう。ポーランドのストライカー、レワンドウスキーをどうマークできるかがポイントとなろう。順当にいけばドイツとポーランドがベスト16へ抜けるのではないか。

 グループEにはアイルランドが入り、ベルギー、イタリア両強豪国と対戦する。このグループで2位になるのは至難の業である。初戦のスウェーデンに勝てば、何とか3位でおこぼれ突破の可能性はあるが厳しいことにはかわりない。順当にいけばベルギーとイタリアは抜けるであろう。

 その他のグループAには地元フランス、そしてスイスあたりが予選突破か。グループDは強豪優勝候補スペイン、そしてチェコあたりがベスト16に進むだろう。

 グループFにはクリスティアーノ・ロナウドがいるポルトガルが有力候補ではあるが大試合に弱いジンクスがある。あれよあれよという間に出場を勝ち取った小国アイスランドや、オーストリア、ハンガリーもチャンスは十分にある予断を許さないグループだ。

 ともあれワールドカップより力の均衡した国同士のミスの少ない、激しいスピードあふれるユーロの試合は世界一の質を持っており、どの試合も何が起こるかわからないサポーターにとっては堪らない試合の連続であろう。

 テロの脅威はまだフランスにはあるがこの6月には平和的な環境の中で世界一の質のあるフットボールを楽しみたいものである。

 最終的な優勝候補としてはやはりスペイン、ドイツの名前が浮かぶがイングランドというダークホースも忘れてはいけない。ハリー・ケイン、バーディといった若手新生選手の台頭でイングランドにもチャンスはある。


◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
  89−04:日本サッカー協会欧州代表
  94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
  08    :JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫