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屋良っティーニの教えある記『ぼきゃぶら天国!!』

13・07・11
 コンフェデや日本代表、セレソンのことなど、書いてみようかと思ったんですけど、大御所の方々と対抗しても勝てません(勝負してないけど・・・)ので、いつもの育成現場ネタでいきますね!

 今回「ぼきゃぶら天国!」と称し、試合でしゃべれるサッカー用語集なるものを作ってみた。

 始まる前は、ペラペラ、ペラペラいらんことばっかりよくしゃべるのに、試合になったら途端に「しーんッ」って、試合の状況によっては一言も発せず「キーンッ」って凍りついてる場合もあったりして。試合開始時の「声出そうぜ! 気合い入れよーぜ! 先、一点!」なんて盛り上がっといて。試合中は黙っちゃう・・・。

 さらには「声出せー!!」ってベンチで監督さんも叫んだり、応援のお母さんも「声出せー!!」って。騒いでるのは、大人ばっかり。違うんだよな〜

 例えば、ブラジルでは、試合中相手を背負ってる時なんかは「ラドロン(泥棒)」って周りの選手がコーチングするんだよね。まぁ〜、それよりなにより、ブラジルの子のサッカーは、文句になってる場合も多いけど、よくしゃべる!

 日本の子って考えるに・・・。何を言っていいかわからないってこと?! どんなタイミングで、仲間に何を伝えてあげればいいのかわからないんですね〜。「言ったこと間違ってたらどうしよ〜」ってのも少なからずありまっせ! そんな状態で、周りが「声出せ〜」って言ったところで、無茶ですよね〜!

 そーなると、せっぱつまって「がんばろ〜ぜ〜」くらいしか出てこないですよね! しかも、それってコーチングでもなんでもない。味方にとってコーチングは、指示の声でなくては意味がないのです! (そもそも、頑張らない奴なんて試合に出さなきゃいいんだ!!)

 我がチームも、そんなことにならないように、とりあえず、試合のVTRを確認し、自分がよく使うコーチング用語を表にしてみた!! その用語を選手たちが、同じ状況で使っていけば、共通理解できる!

 例えば・・・。
・「前に立て」:相手と1対1の場面などで、ズレを修正させたいとき
・「寄せろ」:相手と1対1の場面などで、距離を近づけさせたいとき
・「距離、バランス」:自分たちの距離感がバラバラのとき
・「付いていけ」:抜かれたりズラされたりして、アプローチ出来なくなっているとき
・「持ち直せ、キープし直せ」:パスもドリブルもできず、時間をつくりたいとき
・「背負ってる、付いてる(ラドロン)」:背中にマークがついてるとき
・「つなぎなおせ、シンプルに」:雑なコントロールがつづいたり、蹴り合いになってるとき

 などなど、思い浮かべればその状況が目に浮かびませんか?(少年サッカー指導の方のみですが・・・)それを刷り込んでみんなの共通ボキャブラリーにしていけば、その場面で言うべきことに迷いがなく仲間にコーチングしやすくなるでしょ? ただ、「何やってんだよ〜」って怒っても怖いだけで、子どもにはわからない時って多いもの。

 例えば、「付いていけ〜」って仲間からコーチングされてるのに、マークが外れて失点をくらったときなんかには、「抜かれた後、付いて行かなかったから、やられたんだよ!」って説明と修正もしやすくなります!

 また、これらは当たり前の状況でたとえわかっていても、確認も込めてコーチングしろって伝えてある。よく、電車の運転手が声を出しながら信号を指さし確認して「出発進行!」って、やるでしょ!あれあれ。近所に消防署があるんだけど、消防士さんの訓練みてたら、ひとつひとつの動作に声出しながら「ホース確認! ○○放水準備〜 ほ〜〜す〜〜い!」って大きな声で行っていくのを見たことがある。なぜって? そこに、間違えがあってはならないからなんだよね!

 サッカーの試合だってそうでしょ? 間違えがあったらやられるんですよ! まぁ、サッカーと消防では危機感が違うかもしれないけど、そういう意味でも、お互いコーチングが必要なんだよ。仲間に伝えなきゃいけないんだよって・・・。

 ってことで、うちの選手たち、やっとわかってきたようです! そのうち「ラドロン!」ってポルトガル語も使ってみようかと思います。簡潔だし、子どもたち面白がって使いそうですからね!


◆筆者プロフィル◆
屋良 充紀(やら みつとし)= ロベルト屋良っティーニ
現役時代はブラジル、エクアドル、コロンビアでプレー、コロンビアではコーチも兼任。
帰国後、横浜FC泉Jrユースの監督として7年間指導。その後『JFAアジア貢献プロジェクト』で中東のシリアで未来のシリア代表選手を育成するべく、SFA(シリアサッカー協会)フットボールアカデミーを開校しヘッドコーチを務めた。アラビア語で『サッカー指導指針』をつくり、シリアは勿論のこと海を越えてアフリカ・スーダンでも高い評価を得ている。現在は横浜市でブラジルのストリートサッカーをヒントに遊び心をくすぐるサッカースクール、『エスコリーニャFC』と、川崎市でジュニアユースチーム『リーベルプント』を設立し、力を注いでいる。また、本紙以外にも『ジュニアサッカーを応援しよう』のホームページで『やら・り〜の基礎サッカー講座』を掲載中。

ロベルト・屋良っティーニ