サッカーアラカルチョ

一覧に戻る

ヨーロッパサッカー回廊『コンフェデレーションズカップから見えたこと』

13・07・11
 来年のワールドカップの前哨戦、コンフェデレーションズカップがブラジル各都市で行われた。

 英国ではイングランドも出場しないのに、なぜか全試合ライブでのテレビ放映がなされ多くのフットボールファンを喜ばせていた。時間もわずか4時間の時差のため、ロンドン時間午後8時のゴールデンタイムにキックオフと誠にテレビ観戦にはうってつけの大会であった。

 最初の開幕戦はブラジル対日本。そう日本の試合が英国BBCの生放送で観戦できるとはラッキーこの上ないとチャネルを回してみた。フットボールのキャスターはグランパスにもいたリネカーが出演。

 『私がJリーグのグランパスでの開幕戦を鹿島と対戦した時、ジーコが40歳でプレーしており、5−0と大敗したよ』と、まずは日本とブラジルを紹介した。実は筆者も当時ロンドンより駆けつけ、この試合のテレビ放映(テレビ東京)の解説者としてリネカーを中心に解説をしたが、ジーコの凄さとリネカーの孤立さが際立っている試合として思い出される。

 その後、2006年のW杯で日本はブラジルと対戦し4−1と大敗。果たしてこのコンフェデでのブラジル戦はいかにと期待していたが、開始早々にしてネイマールの一発で試合は終わってしまった。全く手も足も出ない試合であった。2戦目のイタリア戦はシーソーゲームで前半2点先取したが追いつかれ、結局4−3で敗戦。多くの課題を残した試合となった。消化試合となった3戦目のメキシコ戦も2−1と敗北。3戦全敗、なすすべもなく大会を終えた。

 さて課題は何であったのか。英国のメディア、英国人の友人などとの雑談から指摘してみたい。

1.まず日本代表のメンバーがここ2、3年固定している。ということは円熟してきたのか、それともチーム全体が老齢化してきたのか? 

 「おい、ミスターイトウ、日本には若手の生きのいい選手はいないのか?ネイマールは21歳だぜ。カガワはもう23歳だ。まだMUではレギュラーではない。コンフェデではそこそこやっているが、日本のリーダーとしての働きはなかった。彼に頼っても試合には勝てないよ。デフェンスは穴だらけ。Yoshidaはスクールボーイのミスをしたね。サウサンプトンでは終盤出場していないがちょっと無理ではないか。判断も悪いしスピードもない。どこかに生きのいい20歳ぐらいの選手はいないのかね。」

 「まるでイングランドみたいなチームだよ。21歳のウイルシャーが期待されているが、けが持ちで来年活躍するかは賭けみたいなものだ。ジェラード、ランパードも年だし来年は期待できない。ルーニーも体重過多で動きが遅くなり、また移籍のゴシップに振り回されていて、これからの伸び代はない。ブラジルの若手には及びもしないね。」

 まとめると、ベテランと若手のバランスが取れたチーム編成にしなければ、決して勝てるチームにはならないだろう。日本には若手はいないのか!!奮起せよ、若者よ!!

2.ストライカーはいないのか?いないならどう戦うべきか。

 「昔、日本には釜本という偉大なストライカーがいたが、今は誰がいるのかね。前田では物足りないね。岡崎は点取り屋ではあるが相手デフェンスを嫌がらせられるプレーヤーではないね。ブラジルには、ごついストライカー、フレッドがいるし、ゴール前の肉弾戦にも迫力がある。左に決定力のあるネイマールもいる。比べて日本はちょっとひ弱だね。ホンダはいいが一人でストライカーとプレーメーカーを同時にやれというのは酷だよ。評価できるのは彼一人だね。」

 「日本にはストライカーがいないね。スペインにはセンター・フォワードとしてはトーレスがいるが、彼は余り機能せず、相変わらずイニエスタ、シャビを中心とするパス回しの天才プレーヤーで試合をしており、彼らも4年間は持続できたが、もう過去のチームだね。結局今回でスペインフットボールも終わったようだ。」

 「ブラジルの強さは圧倒的なプレスで相手にパスする余裕を与えないし、今回は出ていないがドイツがヨーロッパ一に復活してきており、パワーフットボールの復活が来年のW杯の話題となることは間違いないよ。イタリアも悪ガキ、バルテリがセンター・フォワードとして相手のデフェンスをかきまわしている。ウルグアイにもナポリのカバーニという大柄なストライカーがいる。となるとストライカーのいない日本はスペイン式天才パス回しで隙をうかがい、中に入った選手がすべて点取り屋となれる程のゴールハンターの選手をそろえられるかが課題であろう。不動のストライカーを置かないと来年はまた期待を裏切る結果に終わるではないだろうか。でもいなければ、現在の陣容で惜しい試合を続けるしかないかもね。」

3.チームマネージメントも変える必要がある。

 「いつの頃からか外国人監督を招聘すると、金魚の糞のようにアシスタント、GKコーチ、フィジオなどなど、まるでマフィアの一群のように監督の仲間(同じ国から)が一緒に付いてくる。そしてチームマネージメントとしてチームを率いる。Why? イングランドはこれに懲りてやっとイングリッシュの監督ホジソンを任命したのに、ジャパンはこの教訓をわかっていないのかね。」

 「外国人を監督にするのであれば、ほかのアシスタント、GKコーチ、フィジオ、マッサーなどなどのチームスタッフは断固として日本人になぜ出来ないのかね?現在のようにイタリア軍団であれば一旦彼らが更迭されたら日本に何が残るのか。選手にだけでは、コーチ、GKコーチ、フィジオ、マッサーのノウハウは継承されないよ。」

 「まずもって外国人監督招聘の条件として他のスタッフはすべて日本人とすべきではないか。そうすれば次代への継承はできる。コーチも育つ。そして通訳はコーチがやるべきである。言葉が出来る単なる通訳が表に出ると通訳が監督となってしまうという皮肉なことが起こる。次期監督候補がコーチ兼通訳となるべきだ。日本のコーチ資格に外国語習得の試験も加えたらどうかね。」

 「と言ってもザッケローニを即、更迭せよということではない。更迭するかどうかは協会が決めることであり1年前の現在そこに手を付けるべきかどうかは協会が判断すべきであるが、責任はとらないといけないね。ただ負けているのにストライカー前田に代えデフェンスの吉田を入れたような采配はミスジャッジと評価されても致し方ないことであろう。少なくとも日本人コーチ(言葉が出来る)を入れるべきである。それは今からでも遅くはない。」

 さて、皆さまはどう思われますか?

 ともあれ、来年のW杯はもはやスペイン的パス回しのボールポゼッションチームは優勝できず、ピッチ全体でのプレス、センタ−フォワードの存在、そして強い意志と体力のあるチームが優勝するのではないかと予感させるコンフェデであった。


◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
  89−04:日本サッカー協会欧州代表
  94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
  08    :JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫