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屋良っティーニの教えある記『王様的思考の落とし穴!?』

11・02・11
 やりましたねアジアカップ! 先制点を取られても退場者が出て、人数が少なくなっても、逆にそれでやり切ってしまう。この大会で一戦一戦、益々たくましく成長し4度目の優勝を果たした日本代表を誇らしく思います。

 一方で、2年前シリア代表のコーチを務めていたので、中東勢が負けていく姿を目にするたびにさびしい気持ちにもなりました。ちなみに、シリアは2年前に僕がいた時のメンバーで中心選手たちは全く変わっていませんでしたね。

 昨年行われた南アフリカワールドカップでも、中東勢は1974年の西ドイツ大会以来、本大会に出場できなかったし、このアジアカップでは、参加した16か国のうち半数を超える9か国が中東勢で、準決勝にはイラン、イラク、カタール、ヨルダンの4か国が勝ち上がったものの、あっさりと姿を消してしまった。

 前回のアジアカップ決勝は、イラク対サウジアラビアだったのにサウジアラビアなんてそんな姿のかけらも見せぬまま敗退(ひょっとすると今大会1番弱かったかも・・・)。

 その昔、中東勢はめっぽう強かった! 骨太な骨格、あたりの強さ、キック力、毛深さ!?などなど、「中東勢がアジア枠なんて、ずるい・・・なんかちがう・・・」なんて思っていた。

 豊富な資金で、立派なスタジアムを建設し、外国人選手をたくさん招き、帰化させ、代表チームには外国人監督を配置する(日本もやったことですが!)。その場のサッカーを楽しみ、強化するためには、手っ取り早く出来ることは全部やってきている。

 今大会、先制したり、相手に退場者が出たり、試合を運ぶ上では、有利な展開になりながらも最後に逆転されていた場面を見たりもした。

 サウジアラビアに関しては、ヨルダンに負けて監督更迭でチーム内部が上手くいかなかったことも予想されるけど、それもこれも、目先のサッカーの快楽を求め、そこに投資した半面、中東勢がハマってしまった落とし穴。。。重要なことにあまり力を注がなかったことが原因だと思うんです。

 それは、『指導者育成と、選手育成』ではないかと思っている。この育成事業は20年のスパンで考えなければ結果を求めることが出来ず、『つくるよりも完成したものを欲しがる』傾向にある中東の王様的思考が招いてしまったんだと思うんです。

 今回の大会で痛い目にあった中東勢が今後、着実に力を発揮するには、長期的に選手の育成を考え、良い選手を輩出できる環境とシステムづくりだと思います。

 裏を返せば、育成システムなしで、ここまでやれてるんですから、確立されたら、恐ろしく強くなると思うんですよね。今後、また中東勢が復活することでアジアのレベルアップが加速するでしょう。そして、レベルアップしたアジア予選を勝ち上がることが出来れば、南米や、ヨーロッパの国からワールドカップをもぎ取ることができると思うんです。。。

 今後の『中東の逆襲』に期待します!!


◆筆者プロフィル
屋良 充紀(やら みつとし)
現役時代はブラジル、エクアドル、コロンビアでプレー、コロンビアではコーチも兼任。
帰国後、横浜FC泉Jrユースの監督として7年間指導。その後『JFAアジア貢献プロジェクト』で中東のシリアで未来のシリア代表選手を育成するべく、SFA(シリアサッカー協会)フットボールアカデミーを開校しヘッドコーチを務めた。アラビア語で『サッカー指導指針』をつくり、シリアは勿論のこと海を越えてアフリカ・スーダンでも高い評価を得ている。現在は横浜市でブラジルのストリートサッカーをヒントに遊び心をくすぐるサッカースクール、『エスコリーニャFC』に力を注いでいる。
ロベルト・屋良っティーニ