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いよいよW杯2018&2022年の開催地が決まる

10・11・16
 12月2日チュリッヒにて2018年と2022年のFIFAワールドカップ開催地が決まる。現在立候補しているのは2018年がヨーロッパ勢のイングランド、ロシアと、スペイン/ポルトガルの共同開催そしてオランダ/ベルギーの共同開催の4候補地である。
 
 一方2022年はアメリカ、オーストラリア、そしてアジアの日本、韓国、カタールである。
 
 果たして何処が開催国となるのか?
 
 このW杯の開催国はFIFAの24名の理事による投票で決まる。この点オリンピックのように加盟国数によって多数決で決まるのとは異なり、少人数の理事による極めて政治的な力が働く決定方法である。そして過半数支持を得るまで最下位の国を落としていく投票方式で決定される。
 
 従って、過去のW杯の開催国決定にはそのプロセス上幾多のスキャンダルと陰気な裏取引が半ば公然と行われていた。しかし表面的には公平な投票とされているにもかかわらずである。
 
 例えば2002年の日韓共同開催時には有利と思われた日本開催がどたん場で韓国のチョンモンジュ理事(当時現代重工の副社長)の政治力と経済力で他理事の支持をとりつけ、決戦投票になれば韓国有利とみた、FIFAの当時会長ハバランジェとブラッター専務理事の調整で無投票での共同開催という妥協の産物を生み出したのである。
 
 韓国は当時、ヨーロッパ、南米への自動車の進出を図っており、商圏拡大のためその界の有力者である理事にFavour(恩恵)を与えたといわれている。ブラジルへの進出のため、商権をブラジル代表理事へ与えたとかの噂も立ったほどである。
 
 そして2006年の開催地についても2回にわたる投票の結果、残った南アとドイツが3回目の決戦投票で、何とニュージーランドの理事デムシーがドイツの出版社より買収要請の手紙がホテルの部屋に投げ込まれたことを理由に、途中退場し、棄権してしまったのである。その結果12票対11票でドイツに決定したのである。ここでもトリニダードの理事ワーナーが自国のテレビ局の為に暗躍したとかの噂も飛び決してフェアーな投票とはいえないのがいつもの開催地決定のプロセスなのである。
 
 さてこの2018年、2022年はどうなるか?
 
 あと半月足らずの中でやはり過去起こったスキャンダルはまた起こった。
 
 英国新聞サンデー・タイムス紙のレポーターがアメリカのエージェントを装い、FIFA理事のナイジェリアのアダム氏に人工芝の敷設資金提供として80万ドルを提供する代わりにアメリカの投票を依頼、受けたと報道された。またタヒチのテマリー理事も支持の見返りにスポーツアカデミーの設立資金1.5百万ポンドを要求したと報じられた。
 
 このスキャンダルによってFIFAはこの2人をFIFA理事1ヶ月職務停止の罰則を与え、この11月17日に事実関係も含め倫理委員会で再審することになっている。本人たちは否定しているが、更に罰則が加えられればこの2人の投票権はなくなることになる。
 
 一方またカタール(2022年立候補)とスペイン/ポルトガルがお互い理事を輩出していることから票の持ち合いを図っているという報道も流れており、カタールのビン・ハマン理事はそれを否定しているが事実はどうかは不明確。更にはロシアが前述のナイジェリアの理事を買収したとか噂もあり唯一公明正大なのは日本からの理事だけではないだろうか。FIFA理事24人中8人が立候補当事国出身とあって、票の持ち合いもさることながら、誰がどの国と経済的、政治的関係があるとか、商権を巡る裏取引もあるとか、加えて世界のフットボール界へのドンとしての足がかりにしようとする野心家も多くおり、必ずしもフットボールの発展という大儀だけでこの開催地が決まるわけではない。
 
 ちなみに現在のところ有力視されているのは、2018年イングランドとロシアであるが、ここ数週間でイングランドのサンデータイムスのスキャンダルからイングランドを支持するのは得策でないとする理事が多くなってきており、本命と見られていたイングランドは予断を許さない。そのためイングランドはウイリアム王子の派遣を決め、またFIFAに対し英国新聞のスキャンダルとイングランドのキャンペーンとは関係ないとする声明をだすなど、あと2週間の間で火消しに躍起となっている。この中でスペイン/ポルトガルの名も上がってきた。イングランドに嫌気を差し、ロシアもインフラ整備が出来るのか心配する南米、中南米の理事の票が同言語国しかも今年のW杯で優勝したスペイン/ポルトガルを支持するのではともいわれており混沌としてきたのである。
 
 次の2022年はどうかというと、上記のスキャンダルに巻き込まれているのはカタールであり、?開催時期が6月のカタールの気温40度以上で試合ができるのか?小国に32チームのキャンプ地があるのかといった問題もあり可能性はないであろう。日本、韓国はお互いキャンペーン自体が果たして理事の支持を取り付けるだけの利権商権を持ち、食い込んでいるのか、ついこの前2002年に実施したばかり等々の声多く、理事たちの狙いでもある政治的経済的な関係なくして開催実現は難しい状況である。
 
 本命はアメリカ、その対抗馬はまだオセアニアでのW杯開催がないオーストラリアというのがヨーロッパのFIFAに近いメデイアの見方である。ではどちらかとなると8票を持つUEFAヨーロッパの理事はアメリカ志向であろうとされ、南米も時差のないアメリカ支持であろうと。アフリカ票が果たして何処に流れるかであるが、もしオバマ大統領が出席すれば確実にアメリカとなるとみられており、その意味で誰がその国を代表して出席するかもキーポイントとなろう。
 
 しかし2002年の決定時も2006年の決定時もそうであったが、投票日前日、当日まで何が起こるかわからないのが、わずか24名それも海千山千のつわものの理事による投票であることを忘れてはならない。ハップニングは必ず起こる。
 
 
◆筆者プロフィル
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
  89−04:日本サッカー協会欧州代表
  94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
  08    :JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
現在:T M ITO Ltd.(UK)代表取締役
伊藤 庸夫