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ヨーロッパフットボール回廊『W杯も終盤、決勝戦にスペイン対アルゼンチン』

26・07・18
 
 6月11日に開幕した北米3か国(アメリカ、カナダ、メキシコ)共催によるW杯も終盤を迎え、ベスト4による準決勝戦が行われた。

 勝ち残った国は前大会優勝のアルゼンチン、そして欧州のスペイン、フランス、イングランドの4強であった。世界一のフットボール王国とも言われるブラジルはベスト32戦で日本に勝ったが、北欧の雄、怪物ストライカーのハーランドを擁するノルウェーに敗退、ベスト16で姿を消した。またヨーロッパの古豪ドイツもベスト32戦で南米パラグアイにPK戦で破れ大会を去った。

 結局ベスト8に残った国は、フランスVSモロッコ、スペインVSベルギー、ノルウェーVSイングランド、アルゼンチンVSスイスの8か国であった。アジア勢は日本、韓国、オーストラリアも大会前にはベスト16まで勝ち残れると予想されていたがすべて敗退、アジアは弱小地区となってしまった。

 フットボールが国民的スポーツとして、またフットボール経済強国として君臨する欧州6か国に加え、南米の前回の覇者アルゼンチン、そして次回2030年共同開催国(スペイン、ポルトガル、モロッコ)の一員となっているモロッコが8強として準々決勝に進んだのである。

 準々決勝の結果は、フランス3−0モロッコ、スペイン2−1ベルギー、ノルウェー1−2イングランド、アルゼンチン3−1スイス。この結果、準決勝に進んだのは、フランス、スペイン、イングランド、アルゼンチンとなった。

 7月14日、準決勝のスペイン対フランスが行われ、スペインが優勝候補の筆頭であるフランスを2−0と破り決勝に進んだ。一方のアルゼンチン対イングランド戦は7月15日アトランタで行われ、イングランドが後半10分、FWゴードンのゴールで1点先行したが、後半40分、47分に39才メッシのアシスト2発で逆転、決勝戦に進んだ。この試合は因縁の試合でもあった。1986年W杯メキシコ大会でのマラドーナの『神の手』ゴールは現代のVARシステムであれば当然認められなかったのである。

 果たして今大会の優勝は、前回カタールW杯覇者のアルゼンチンか、はたまたヨーロッパ選手権最多優勝保持者スペインか、決勝戦は7月19日にニューヨークジャージスタジアムで行われる。

 ここまで1か月以上の長丁場のW杯、問題点は数多く発生しており、列挙してみよう。

◇まず試合形式としてHydration Break(給水タイム)が前後半の真ん中23分、68分目処でそれぞれ3分間採られた。まさしくアメリカンフットボール形式の採用であり論議を呼んでいる。フットボールの起源にさかのぼれば、試合時間90分は45分ハーフであり、その間休みはないのがルールであったが、今大会は夏場の暑さ対策として3分のブレークを設けた。この3分で監督の戦術変更指示等が行われたが、このアメリカンスタイルが次回からも定着するのかどうか、ヨーロッパ各国はこれを否定している。

◇アメリカ大統領トランプの一言でスポ−ツに政治が介入し、フットボールの規則が歪められた事態となった。アメリカ代表のFWフォラリン・バログンがベスト32ボスニア・ヘルツェゴビナ戦で反則によりレッドカードが提示され、次試合出場停止となった選手に、アメリカ大統領トランプがFIFAに善処せよと要請。結局、出場停止処分が猶予され、ベスト16戦ベルギーの試合に出場したケースである。明らかに政治的介入に屈したFIFAとなってしまった。
 結局、その試合はベルギーが4−1で勝ち話題が消滅。その後、この選手は「レッドカードで次試合出場停止となり、自分はチームの練習の手伝いをしていて試合に出場することは無いと思っていた」と告白し、試合でも中途半端なプレーで自チームに貢献することなく敗退してしまった。トランプ大統領そしてFIFA会長のルールを曲げた配慮は今後の大会に疑問符を残した事件であった。

◇アルゼンチン対イングランド準決勝戦は、お互い負けられない過去の事件(イングランドのベッカムが1998年フランス大会でアルゼンチン、シモーネに足蹴りし一発退場等)が思い出される。前半戦はお互いの削り合いの激しい闘いとなったが、レフリーは反則を取らず流し荒れた試合となった。
 今回のW杯でのレフリングに関しては、従来過去のファールはファールとして取り、そのためプレーが停止する時間が増えたが、今回のW杯では50対50の場合はファールをとらず試合の流れを止めないレフリングとなっている。そのため反則を見逃すケースも多々あり、荒れた試合となっていた事も否めない。今後どう解釈し審判が判断するのか、VARシステムの導入と共に再検討する必要はあるようだ。
 この試合イングランドは、1−0とリードしていた後半、給水タイム直後先制点を取ったFWゴードンを下げバックスにコンサを投入し5バックスのシステムに変更。更にバックスに長身バーン及びオレイリーを入れ守りに入った。
 このシステム変更が起因し、アルゼンチンはボール支配率88%で圧倒的に攻め、結局メッシのアシストで、後半40分フェルナンデスのロングシュートで同点。47分にはマルチネスのヘッドで逆転。英国中のパブ及び家庭でのテレビ観戦者数の2000万人を超えるサポーターの期待を裏切り結局敗退。システム変更したドイツ人監督トーマス・トゥヘルの弱気な戦術感に失望、一挙に国民の不支持は60%を超えThe FAはこの監督人事をどうするのか注目されている。3位決定戦フランスとの対戦次第では更迭もあり得る国民感情となっている。

◇アルゼンチンサポーターが、英国領フォークランドはアルゼンチン領土であるとの政治的キャンペーンを展開し、試合キックオフ前にこのスローガン旗をかざし訴えた。これは1982年に英国領であったフォークランド(アルゼンチン沖の小島=英国領)をアルゼンチンが侵略、当時のサッチャー政権はただちに海軍を派遣、両軍激闘を展開し、結果は英国軍がアルゼンチン軍の侵略した地域を奪回し戦争は終結、英国が現在でも統治している。
 そのフォークランド諸島はアルゼンチン領であるとのバナー(旗)を試合前のピッチに掲示し、これはFIFAの政治的キャンペーンを禁止する大会規約に反するとして罰則を適用する可能性も出てきた。昨今の世界情勢渾沌化がフットボールにも波及してきており今後の動向に注目したい。

◇明るい話題としてはノルウェーの躍進であろう。バイキングの祖ともいえるノルウェーの『Viking Row(漕ぐ)』の応援(サポーター席に座って全員でボートを漕ぐジェスチャーの応援)は圧巻であり、ラグビーのニュージーランドのHakaと並び世界の2大応援として定着した感がある。

◇今大会は48カ国参加の大大会となっているが、FIFAは次の大会(スペイン、ポルトガル、モロッコ)から更に参加国を増やし64カ国でのW杯を計画している。どうなるか注目!

◇W杯は国の代表としてその国の国籍を持つ選手による大会である。しかるに例を挙げれば、フランス代表選手は26選手中、21人は黒人系移民であり、一部から批判の声も聞こえてくる。いわく白人フランス人のいない代表チームであるという揶揄も出てきている。
 本来スポーツの世界では人種を越えた闘いでもあり人権的にも相容れない言葉であるが、試合前の国歌も歌えないのが代表選手なのかという点も指摘されている。フランスの至宝エムバペも父親がカメルーン出身、母親がアルジェリア出身である。本人はフランス生まれのフランス育ちであり、国のヒーローとして持てはやされている事には変わりない。

◇今大会こそ、過去現在を通じて年齢が高じても世界のトップ選手として活躍している選手が多いのも特徴であろう。ポルトガルのロナウド(41才)を筆頭に、クロアチアのモドリッチ(40才)、アルゼンチンのメッシ(39才)。一方では若手の台頭も著しい。スペインのヤマルはまだ19才、イングランドのベリンガム23才。

 3位決定戦は7月18日、決勝戦は7月19日に行われる。波乱に明け暮れたW杯もそろそろ閉幕。次の2030年に期待しよう!


◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
  89−94:日本サッカー協会欧州代表
  94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
  08:JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫