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ヨーロッパフットボール回廊『大詰めのW杯前のヨーロッパ戦線』

26・05・15
 ワールドカップ北米大会の開幕6月11日まで1か月を切った。

 一方世界各地では戦争が継続されている。ロシア対ウクライナ、イラン対アメリカおよびイスラエル、パレスチナ対イスラエルの戦争は拡大され終結の兆しは見えない状況にある。古代オリンピック開催に際しては例え戦争中であれ、戦争は一旦休止し平和裏に行われた。このオリンピック精神の起源を思い越すことができないのであろうか。戦争当事者たるアメリカは戦争しながらW杯を主催するのであろうか。

 ともあれ、フットボールのメッカ、ヨーロッパ各国はW杯を目の前にしてその国のトップリーグは最終コーナーにかかっている。

 まずはイングランドのプレミアから見てみよう。あと2試合を残してアーセナルがトップの座を確保しているが、リーグ前半苦戦を強いられたマンチェスター・シティ(MC)が年明けとともに躍進し5月13日の対クリスタルパレス戦に3−0と圧勝、トップアーセナルと2ポイント差に詰め寄ってきた。

 この対クリスタルパレス戦でイングランド代表のシャドーストライカー、ホーデンが半年にわたる不調なパフォーマンスから目覚め、2アシストし完勝に導いた。続く5月19日対ボーンマス(アウエー)、そしてリーグ最終日5月24日アストン・ビラ戦(ホーム)に勝てば、アーセナルが5月18日のバーンレイ戦(ホーム)、24日のクリスタルパレス戦(アウエー)の結果次第でMCが逆転優勝する可能性も出てきた。

 3位の座を確保するのは シーズン途中ヘッドコーチ、アモリムを更迭、代理監督として就任したマイケル・カーリック率いる名門マンチェスター・ユナイテッド(以下MU)がほぼ確実である。来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場権を3年振りの獲得が確実となり、MUのDNAを受け継ぐ監督として期待されている。

 一方でプレミアリーグから降格危機の名門クラブがある。かのリネカー、ガスコインを擁し常にプレミア上位を勝ち取っていたトッテナム・ホット・スパーズ(以下スパーズ)が今シーズン低迷、あと2試合を残し17位。その降格圏にはロンドンイーストエンドのライバル、ウエストハムがわずか2ポイント差で18位となり降格の危機に陥っている(18位ー20位の3チームが降格する)。

 スパーズは残り2節でチェルシー(アウエー)及びエバートン(ホーム最終戦)と対戦、ウエストハムはニューキャッスル(アウエー)及びリーズ(ホーム最終戦)で勝ち点2差を逆転できるかロンドンっ子を二分する戦いは厳しい。

 筆者は英国駐在した1980年最初の試合観戦がウエストハム戦であり、その後Jリーグ発足時ユースアカデミー制を導入した時はウエストハムモデルを参考にした経緯がある。またスパーズとはリネカーのJリーグ(グランパス)入りの際キリンカップ参加で関係しておりどちらが落ちても寂しい気持ちがするのでまともに見られない最終戦になるかもしれない。

 そしてEFLチャンピオンシップ(2部)からプレミアへ上がるチームとして既に1位コベントリーと2位イプスウィッチが昇格を決めている。3位から6位で行われる第3の昇格席を巡り、4チームで準決勝2戦と決勝戦を行い優勝チームがプレミアに昇格することになっている。

 5位ミドルスボロ対4位サウサンプトン戦は準決勝2戦を終えて、サウサンプトンが勝利。同じく3位ミルオールに勝った6位ハルと対戦し決勝を戦うことになっている。しかしピッチ上の戦いではなく規則違反でハルが勝者となる可能性が出てきた。

 その理由はサウサンプトンにあり、準決勝第1戦前、ミドルスボロの練習場にサウサンプトンのスパイが忍び込み練習風景(及び先発メンバー等)を観察していたことが判明、連盟規約に違反する行為としてオミット(除外)される可能性が出てきた。まだ裁定は下されていないが、どうなるか注目である。

 スコットランドのリーグも最終戦を残しハーツが名門セルチックに1ポイント差をつけリード、5月16日の直接対決で栄誉の行方が決まる。日本人選手前田大然が最近好調で得点を増産しているだけにホームアドバンテージのセルチックの逆転優勝も見えてきた。

 ヨーロッパではフランス、リーグAの覇者は最終戦を残しパリサンジェルマンが2位ランスに9ポイント差と圧倒的な強さでチャンピオンに輝いた。更にUEFAチャンピオンズリーグでも最終決勝戦でイングランド、アーセナルと雌雄を決することになった。

 スペインではバルサが宿敵リアルマドリッドの勝ち点80を凌駕し91ポイントの勝ち点でリーグを制した。ただバルサの至宝であるウインガーのヤマルがけがをしており、果たしてW杯スペイン代表に選出されるのかは今後の治療リハビリに掛かっており、W杯でのスペイン優勝に一抹の不安を抱えることになった。

 バルサのイングリッシュ代表ラッシュフォードは現在絶好調で代表入りは確実であるが、MUからの期限付き移籍選手として来シーズンバルサへ完全移籍するのか、はたまたMUへ復帰するのかまだ不透明であり推移を見守りたい。MUは完全移籍を主張、24百万ポンド(50億円)の移籍を模索しているが、バルサは今シーズン8得点8アシストのラッシュフォードを完全移籍ではなくローンで継続したいと主張しており、移籍期限の6月末までに彼の去就を決める必要があり注目である。

 ドイツブンデスリーガはバイエルン・ミュンヘンがあと1試合を残し勝ち点86で独走。2位のボルシア・ドルトムンドに勝ち点で16ポイント差をつけチャンピオンに輝いた。ストライカーのハリー・ケーンは今シーズン33得点5アシストの活躍でブンデス優勝の立役者として活躍、W杯でもイングランド代表ストライカーとして君臨することが期待されている。しかし来季ミュンヘンに継続契約するか、プレミアへ戻るかどうかは未定としている。

 日本人選手の話題として挙がっているのは三苫薫選手である。ブライトンでの活躍は目を光るものがあるが、先の試合で負傷退場し果たしてW杯に間に合うのか問われている(編集部注:三苫薫選手がけがの影響でW杯メンバーに選出されず)。

 三苫なき森保Japanは頭の痛いところではあるが、数十人の代表選手がヨーロッパで活躍しており、スピード、激しさに対抗していける素材を集めている日本ナショナルチームのアメリカでの期待は大きい。まずは予選突破から!


◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
  89−94:日本サッカー協会欧州代表
  94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
  08:JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫